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【ケーススタディ】地方政令市1棟RC8,000万円 — 表面12%が実質7%に減衰する構造

ケーススタディ最終更新日: 2026年5月14日

想定物件 — 地方政令市1棟RC8,000万円・表面利回り12%

新潟市・盛岡市・松山市など地方政令市の中心部にある築22年・8戸の1棟RCマンションを想定します。 販売資料の表面利回り12%(年家賃960万円)は魅力的に見えますが、空室率・修繕・管理コストを実勢ベースで織り込むと、 実質利回りは半分以下になる可能性があります。 借入6,400万円(LTV80%・金利2.5%・25年)の前提で本ツールに入力し検証します。

物件価格:8,000万円 / 諸費用560万円
年間家賃:960万円(満室想定)
借入:6,400万円 / 金利2.5% / 25年元利均等
空室率:15%(地方政令市実勢)
運営経費:管理委託費家賃5%・修繕費年100万円・固都税年45万円・共用部光熱費年30万円
建物価格按分:5,000万円 / 残存耐用年数:29年

表面12% → 実質6%への減衰

まず表面利回りは年間家賃÷物件価格=960万÷8,000万=12.0%。 ここに空室率15%を適用するとEGI(実効総収入)は816万円。 運営経費は管理委託費40.8万円(家賃5%)+修繕費100万円+固都税45万円+共用部30万円=215.8万円。 NOI=816−215.8≒600万円。物件価格8,000万円で割るとNOI利回りは7.5%、購入諸費用込み8,560万円で割ると実質利回りは約7.0%です。 表面12%は実質的に7%前後まで減衰します。

年間ローン返済額(ADS)は約344万円。 税引前CF=NOI−ADS=600−344=256万円。DSCR=600÷344≒1.74で、 金利2.5%水準なら返済余力は十分に確保されています。 都心ワンルームと比べて構造的に「物件が稼いでローンを返している」状態です。

金利・空室の感度 — どこまで耐えられるか

シナリオ年間CFDSCR
基準(金利2.5%・空室15%)+256万円1.74
金利3.5%(+1%)+217万円1.57
空室率25%へ悪化+159万円1.46
金利3.5%×空室25%(複合)+120万円1.31

ワーストシナリオでもDSCR 1.31を維持できる構造です。 ただし、家賃下落(家賃▲10%)と組み合わせるとDSCR1.0近傍まで悪化するため、感応度分析で 家賃・空室・金利の3軸ストレスを必ず実行してください。

10年後のIRRと出口価格

10年保有・売却を想定し、出口キャップレートを7.5%(取得時と同水準)と置くと売却価格は約7,650万円。 10年間の累計CF約2,400万円、減価償却累計1,500万円、譲渡所得税(長期)約340万円を加味すると、 投下自己資金1,600万円に対するIRRは概ね10-12%レンジが見えます。 ただし、キャップレートが8.5%(+1%)まで悪化すると売却価格は6,800万円程度に低下し、IRRは7-9%レンジに後退します。IRR出口戦略を 組み合わせた評価が、地方1棟RC投資の生命線です。

このケースから学ぶ3つの教訓

1. 表面利回りは「空室・運営経費控除前」
地方では表面利回り×0.6〜0.7が実質利回りの保守見込みです。

2. 1棟物件は規模のメリットでDSCR耐性が出やすい
運営経費は1戸単位で固定費が積み上がる構造のため、戸数規模が出るとNOIマージンが厚くなります。

3. 出口キャップレート前提が最大のリスク
買値の出口想定が甘いとIRRが想定外に低下します。+1%の悪化シナリオは必ず描いてください。

まとめ

地方政令市1棟RC(表面12%・LTV80%)は、空室・経費・金利ストレスを織り込んでもDSCR1.3以上を確保できる構造で、 実質利回り7%・CF年250万円を狙える投資対象です。 ただし出口キャップレート+1%でIRRが大きく後退するため、保有期間と売却タイミングの設計が成功条件になります。

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