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【ケーススタディ】築28年木造アパート3,500万円 — 短期償却節税スキームの実態と5年目の壁

ケーススタディ最終更新日: 2026年5月14日

想定物件 — 築28年木造アパート3,500万円・耐用年数超過で短期償却

郊外駅徒歩12分、築28年・6戸の木造アパートを想定します。 販売資料の表面利回りは10.3%(年家賃360万円)。 木造の法定耐用年数22年を全て超過しているため、簡便法で残存耐用年数は4年。 建物価格2,000万円を4年で短期償却することで、高所得サラリーマンに節税スキームとして提案される典型例です。 年収1,500万円・限界税率43%(所得税33%+住民税10%)の投資家を前提に、節税効果と保有後リスクを検証します。

物件価格:3,500万円(土地1,500万 / 建物2,000万)
借入:3,000万円 / 金利2.8% / 20年元利均等
年家賃:360万円 / 空室率20%(築古郊外想定)
運営経費:管理委託費家賃5% + 修繕費80万円/年 + 固都税18万円
建物減価償却:2,000万÷4年=500万円/年

初年度の節税効果と保有後の急変

EGI(実効総収入)は360万×80%=288万円。 運営経費は管理委託費14.4万+修繕費80万+固都税18万=112.4万円。 NOI=288−112.4≒175万円。 年間ADS=約196万円でDSCR=0.89と、運営利益だけでは返済をカバーできません。 ただし、減価償却500万円と支払利息(初年約81万円)を経費計上すると帳簿上は大きく赤字となり、 給与所得との損益通算で年間約170-180万円の所得税・住民税還付が見込めます。

税効果込みの実質キャッシュフローは初年度+150万円程度に転換します。 ところが、5年目以降は減価償却が完了するため、節税効果が消失し、運営利益不足が表面化します。デッドクロスと 呼ばれる構造で、帳簿黒字でもCFが赤字になる現象です。

年度減価償却税効果税後CF
1-4年目500万円+170-180万円約+150万円
5年目以降ほぼゼロ▲30-40万円
(課税増加)
約▲50万円

出口戦略 — 5年目売却が王道

この物件タイプの典型的な出口戦略は、減価償却が完了する直前(保有5年経過後)に売却することです。 保有5年超は長期譲渡(税率20.315%)が適用されるため、短期譲渡39.63%との税率差で売却益が約4割多く手元に残ります。 ただし、減価償却で簿価が500万×4=2,000万円減少しているため、譲渡所得額は実額より膨らみます。 売却価格3,300万円(▲200万)の場合でも、減価償却累計を考慮した取得費は3,500−2,000=1,500万円となり、 譲渡所得は3,300−1,500−譲渡費用150万=1,650万円、税額は約335万円です。売却手取りシミュレーターで 手取り額を試算しておくことが必須です。

このスキームの3大リスク

1. 出口で売れなかった場合のデッドクロス継続
郊外築古は買い手プールが薄く、想定価格で売却できないリスクが大きいです。 売却まで2年かかる前提のCF保守値を必ず計算してください。

2. 修繕費の積み増し
築30年超に向けて屋根・外壁・設備の大規模修繕が同時発生する可能性が高く、想定80万/年の修繕費が200-300万/年に膨らむシナリオも想定すべきです。

3. 税制改正リスク
中古不動産の簡便法による短期償却スキームは過去にも税務当局から問題視されています。国税庁の通達変更の可能性は中長期で意識すべきです。

誰に向くスキームか

向く人: 年収1,500万円超で限界税率40%以上、現金ポジションが厚く、5-7年の出口計画を綿密に設計できる投資家。

向かない人: 限界税率20-30%(節税効果が薄い)、出口の買い手探しに時間をかけられない、現金余裕が小さい投資家。

まとめ

築古木造の短期償却スキームは、高所得者にとって初期4年間で年150万円規模の税後CFを生む有効な節税策です。 ただし5年目以降のデッドクロス、出口の買い手リスク、修繕費膨張、税制改正リスクという4つの落とし穴があります。 「節税」を目的化せず、出口含めた7年スパンでのトータルIRRで評価することが投資成立の必須条件です。

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