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初めての投資物件、シミュレーションで見えた3つの落とし穴

ケーススタディ最終更新日: 2026年2月9日

物件概要 — 表面利回り8%の地方RC物件

「表面利回り8%、駅徒歩10分、築18年RC造」。 不動産ポータルサイトで見つけたこの物件は、一見すると堅実な投資先に見えました。 しかし、収支シミュレーションを回してみると、3つの重大な落とし穴が明らかになりました。

項目条件
物件価格3,500万円
構造・築年数RC造・築18年(残耐用年数29年)
満室時月額家賃23万円(年間276万円)
表面利回り7.9%(276万 ÷ 3,500万)
借入条件2,800万円・金利2.5%・期間25年・元利均等
自己資金700万円(頭金)+ 購入諸費用

落とし穴①:購入諸費用で実質利回りが大幅ダウン

不動産の購入には物件価格以外に、仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬・ローン事務手数料など、 多くの諸費用がかかります。この物件の場合、諸費用は約250万円(物件価格の約7%)でした。

つまり、実際の投資総額は3,500万円ではなく3,750万円です。 これを基に計算し直すと、表面利回りは7.9%から7.4%に低下します。 さらに空室率5%・運営経費率15%を考慮した実質利回りは約5.8%まで下がります。

表面利回り: 276万 ÷ 3,500万 = 7.9%
諸費用込み: 276万 ÷ 3,750万 = 7.4%
実質利回り:(276万 × 0.95 − 41万)÷ 3,750万 = 5.8%

広告に掲載される「表面利回り」は諸費用を含まない数値です。利回りの種類と計算方法を理解し、 必ず実質利回りベースで判断してください。

なお、購入諸費用の内訳を詳しく知りたい場合は、本サイトの購入諸費用シミュレーターで 物件価格と借入額を入力すれば、費目ごとの概算額を確認できます。 仲介手数料だけでも約120万円(3,500万 × 3% + 6万 + 消費税)かかるため、 「物件価格の7%」という概算では済まないケースもあります。

落とし穴②:デッドクロスが9年目に到来

RC造の減価償却期間は法定耐用年数47年から築年数を差し引いて計算します。 築18年の場合、残存耐用年数は29年。建物価格2,100万円(物件価格の60%と仮定)を29年で償却すると、 年間の減価償却費は約72万円です。

一方、元利均等返済における元金返済額は年々増加し、利息は年々減少します。 購入9年目にローンの元金返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」が到来し、 帳簿上の利益が手取りキャッシュフローを上回る(=税金が重くなる)状態になります。

デッドクロス = 年間元金返済額 > 年間減価償却費
9年目: 元金返済 約75万円 > 減価償却費 約72万円

デッドクロス後は手残りが減少するため、売却や繰上返済の出口戦略を事前に計画しておく必要があります。 詳しくはデッドクロス完全ガイドをご覧ください。

落とし穴③:空室率10%でDSCRが1.0を割る

この物件のADS(年間返済額)は約150万円です。 満室時のNOI(空室率0%、運営経費率15%で計算)は約235万円で、DSCRは1.57と一見健全に見えます。

しかし地方物件の現実的な空室率を考慮すると、状況は一変します。

空室率EGINOIDSCR判定
0%276万円235万円1.57安定
5%262万円221万円1.47安定
10%248万円207万円1.38安定
20%221万円179万円1.19危険域
30%193万円152万円1.01赤字寸前

空室率20%でDSCRは1.19と危険域に突入し、30%ではほぼ収支トントンです。 地方物件では退去後の次の入居者が決まるまでに数ヶ月かかることも珍しくなく、 空室率20〜30%は十分にあり得る数値です。DSCRの目安と判断基準を参考に、 悲観シナリオでの安全性を確認しましょう。

3つのリスクが重なるとどうなるか

ここまで3つの落とし穴を個別に見てきましたが、現実の投資ではこれらが同時に発生します。 購入9年目にデッドクロスが到来し、同時に空室率が上昇すると、 帳簿上は利益が出ているのにキャッシュフローがマイナスになる「税金貧乏」状態に陥ります。

さらに、金利が上昇していればADSも増加しているため、DSCRの悪化はより深刻です。 たとえば9年目に空室率15%、金利が当初2.5%から3.0%に上昇していた場合、 DSCRは1.0を下回り、毎月の返済のために手出しが必要になる可能性があります。

こうした複合リスクを事前に把握するには、感度分析モンテカルロシミュレーションが有効です。 本サイトの投資分析ツールでは、これらの高度な分析を無料で利用できます。

まとめ — シミュレーションなしの投資判断は危険

表面利回り8%という数字だけを見れば魅力的な物件でも、諸費用・デッドクロス・空室リスクを織り込むと 投資判断は大きく変わります。不動産投資は「買えるか」ではなく「投資として成立するか」で判断すべきです。

特に初めての投資物件では、楽観的なシナリオだけでなく、 「空室率が想定の2倍になった場合」「金利が1%上昇した場合」「家賃が10%下落した場合」など、 複数の悲観シナリオでシミュレーションを回し、最悪のケースでも耐えられるかを確認してください。 投資判断の質は、事前のシミュレーションの質で決まります。

この記事のポイント

  • 表面利回りと実質利回りの差(この例では約2ポイント)を必ず確認する
  • デッドクロスの到来時期を事前に把握し、出口戦略に組み込む
  • 空室率を変動させたDSCRシミュレーションで最悪シナリオを検証する

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