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【ケーススタディ】個人保有から法人化の境界 — 年家賃960万・所得900万超の損益分岐

ケーススタディ最終更新日: 2026年5月14日

シナリオ — 個人保有3物件・年家賃960万円から法人化を検討

会社員兼業の投資家が、個人名義で都心区分マンション2戸+郊外戸建1戸を保有し、合計の年間家賃収入が960万円、不動産所得が約400万円になったケースを想定します。 本業給与年収1,200万円・課税所得900万円ゾーンの限界税率は43.7%(所得税33%+住民税10%+復興税)です。 この水準まで来ると、法人化(資産管理会社設立)で課税所得を分散し、税率を下げる選択肢が浮上します。 本ツールの計算ロジックに当てはめ、法人化の損益分岐を検証します。

個人不動産所得:400万円
本業給与所得(控除後):900万円
個人合算課税所得:1,300万円(限界税率43.7%)
法人化想定:物件を法人へ売却 or 新規物件を法人で取得
法人実効税率:約23-26%(中小法人軽減税率適用)

個人 vs 法人の税負担比較

個人で不動産所得400万円のうち、本業合算で限界税率43.7%が適用される部分は、所得税・住民税で約175万円の税負担。 法人化して同じ400万円を法人の課税所得に移すと、法人実効税率約24%×400=96万円。 さらに役員報酬・退職金スキームで個人と法人の利益配分を最適化すれば、追加の節税余地があります。 単年で約75-80万円の税負担軽減が見込めます。

スキーム年間税負担(不動産所得400万円分)
個人保有(限界税率43.7%)約175万円
法人保有(実効税率24%)約96万円
差額+約79万円/年

法人化の初期コストと損益分岐

法人化には主に以下のコストが発生します。

設立費用: 合同会社で約10万円、株式会社で約25万円
移転コスト: 個人→法人への物件売却で不動産取得税・登録免許税が再度発生(物件価格の約3-4%)
運営コスト: 法人住民税均等割(赤字でも年7万円)、税理士顧問料(年20-40万円)

物件価格合計1.5億円・売却スキームの場合、移転コストは450-600万円程度。 年間節税効果80万円で割ると回収期間は約6-7年です。 したがって「短期で売却予定」の物件は法人化の費用対効果が薄く、長期保有が前提のポートフォリオで法人化メリットが顕在化します。

役員報酬・退職金スキームの追加効果

法人化のメリットは法人税率だけではありません。家族を役員にして給与所得控除を活用したり、 退職金規程で将来の退職時に税優遇を受けるなど、複数の所得分散・課税繰延スキームが組めます。 とくに配偶者役員報酬は給与所得控除(年55万円)と社会保険控除の組み合わせで、所得税ベースの実効税率を大きく下げられます。 ただし、税務署の「不相当に高額」判定リスクがあるため、実態を伴う業務分担と相場感のある報酬設定が必要です。 詳細は法人化ガイドで 体系的に整理しています。

法人化を検討すべきタイミングの判断基準

実務的には以下の3条件のうち2つ以上を満たすときが法人化の検討タイミングとされています。

1. 課税所得900万円超(限界税率33%以上)に到達
2. 不動産所得が年300-500万円以上で安定
3. 長期保有・拡大方針(5-10年売却予定がない)

現状の本業給与水準と保有物件の収益力、5年以上の拡大計画がセットになって初めて法人化の損益分岐を超えやすくなります。 法人モードのシミュレーションは、本ツールのトップページ「法人vs個人 不動産投資比較」モードで確認できます。

このケースから学ぶ3つの教訓

1. 法人化は「課税所得900万円超×長期保有」の組み合わせで効く
いずれか一方だけでは初期コストの回収が困難です。

2. 移転コストと年間運営コストを必ず織り込む
税理士顧問料・均等割は赤字でも発生する固定費です。

3. 役員報酬・退職金スキームで法人化メリットを倍化
税率差だけでなく、所得分散・課税繰延の総合設計が法人化の本質的な強みです。

まとめ

個人課税所得900万円超×不動産所得400万円×長期保有という条件が揃うと、法人化で年間約80万円の税負担軽減が見えてきます。 ただし設立・移転で450-600万円の初期コスト、年間運営費30-50万円が発生するため、回収期間6-7年を許容できる長期視点が前提です。 法人化は「税率差だけでなく、所得分散・退職金スキームを含めた総合最適」で評価することが王道です。

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