不動産投資分析ツール

物件の収支シミュレーションと投資判断を支援します

利回り指標の用語解説

不動産投資の利回り指標に関する7用語を、計算式・具体例付きで解説します。

本記事は不動産投資の基礎知識を提供する教育目的のコンテンツです。実際の投資判断には現地確認・市場調査・専門家(宅建士・税理士・FP等)への相談が必須です。

不動産投資では、物件の収益力を評価するためにさまざまな利回り指標が使われます。 しかし「利回り」と一口に言っても、空室損や経費を含むかどうかで意味合いは大きく異なります。 表面利回りだけで投資判断を下すと、実際の手残りとのギャップに苦しむケースは少なくありません。

本ページでは、不動産投資における利回り関連の重要指標を体系的に解説します。 GPI(潜在総収入)からEGI(実効総収入)、NOI(営業純利益)へと段階的に理解することで、 表面利回りと実質利回りの違い、さらにはキャップレートやGRMの使い分けまで、 実務で必要な知識を身につけることができます。

GPIとは?不動産投資の潜在総収入を理解する

最終更新日: 2026年4月3日

GPI(潜在総収入)は満室時に得られる最大家賃収入です。空室損や未回収損を差し引く前の理論上の上限値として、投資判断の出発点になります。

GPI = 月額家賃 × 12 × 総戸数

GPIとは何か

GPI(Gross Potential Income:潜在総収入)は、物件が満室かつ全入居者が家賃を滞りなく支払った場合に得られる理論上の最大収入です。 投資分析の出発点であり、ここから空室損や運営費用を差し引いて実際のキャッシュフローを算出します。

計算例

条件:1棟アパート(8戸・月額家賃6.5万円/戸)

GPI = 6.5万円 × 12ヶ月 × 8戸 = 624万円/年

駐車場収入や自動販売機収入がある場合は、それらを加算してGPIとする場合もあります。 ただし本ツールでは家賃収入のみをGPIとし、雑収入はEGI算出時に別途加算する設計としています。

GPIの活用ポイント

指標GPIとの関係
EGIGPIから空室損・未回収損を差し引いた実効収入
表面利回りGPI ÷ 物件価格で算出
BER損益分岐比率の分母にGPIを使用

注意点

  • GPIは「理想値」であり、実際にこの金額を受け取れるわけではありません。空室率と未回収損を必ず差し引いてEGIを算出してください。
  • レントロール(賃料一覧)の家賃が周辺相場より高い場合、売却を有利にするためにGPIを嵩上げしている可能性があります。必ず近隣の賃料相場と比較しましょう。
  • 共益費・管理費を家賃に含むか別建てかで金額が変わるため、物件比較時は統一基準で計算することが重要です。

EGIとは?実効総収入で空室リスクを織り込む

最終更新日: 2026年4月3日

EGI(実効総収入)はGPIから空室損・未回収損を差し引いた実際に手元に入る収入です。空室率の見積もり精度が投資判断の正確性を左右します。

EGI = GPI ×(1 − 空室率)+ 雑収入

EGIとは何か

EGI(Effective Gross Income:実効総収入)は、GPIから空室損と未回収損を差し引き、雑収入を加えた実際に手元に入る総収入です。 空室リスクを織り込んだ現実的な収入額であり、NOI算出の基礎となります。

計算例

条件:GPI 624万円、空室率10%、駐車場収入24万円/年

空室損 = 624万円 × 10% = 62.4万円

EGI = 624万円 − 62.4万円 + 24万円 = 585.6万円/年

空室率の設定が重要

エリア・物件タイプ想定空室率の目安
東京23区・駅徒歩10分以内3〜7%
地方政令指定都市・駅近8〜15%
地方郊外・築古物件15〜25%

空室率の見積もりは投資判断の精度を大きく左右します。物件の立地・築年数・間取り・競合状況を踏まえ、 楽観的すぎない数値を設定しましょう。周辺の空室率データは不動産会社や賃貸仲介サイトで確認できます。

よくある間違い

  • 満室稼働を前提にした収支計算は危険です。最低でも5%の空室率を見込みましょう。
  • 本ツールでは空室損をNOIの運営費用に含めず、EGI側で処理しています。二重計上に注意してください。
  • 入居者の入れ替え時には原状回復費用と空室期間(通常1〜3ヶ月)が発生するため、単純な空室率だけでなくターンオーバーコストも考慮が必要です。

NOIとは?不動産投資の営業純利益を理解する

最終更新日: 2026年4月3日

NOI(営業純利益)はEGIから運営費用を差し引いた、借入返済前の純収益です。物件の収益力を融資条件に左右されずに比較できる最も重要な指標の一つです。

NOI = EGI − 運営費用(管理費・修繕費・固都税・保険料等)

NOIとは何か

NOI(Net Operating Income:営業純利益)は、EGIから運営費用を差し引いた借入返済前の純収益です。 融資条件に左右されない物件固有の収益力を表すため、異なる融資条件の物件同士を公平に比較できます。

運営費用に含まれる主な項目

費用項目目安
管理委託費家賃収入の3〜5%
修繕積立金・修繕費家賃収入の5〜10%
固定資産税・都市計画税物件により異なる(評価額の1.4〜1.7%程度)
火災保険・地震保険年5〜15万円程度

計算例

条件:EGI 585.6万円

管理委託費:29.3万円(EGIの5%)

修繕費:35万円/年

固都税:30万円/年

保険料:8万円/年

運営費用合計:102.3万円

NOI = 585.6万円 − 102.3万円 = 483.3万円/年

NOIから派生する重要指標

注意点

  • NOIに空室損を含めてしまう計算ミスが頻発します。本ツールでは空室損はEGI側で処理しており、運営費用には含みません。
  • 資本的支出(大規模修繕)はNOI計算には含めないのが一般的です。別途リザーブとして計画してください。

表面利回り(グロス利回り)とは?物件比較の第一歩

最終更新日: 2026年4月3日

表面利回りは年間満室家賃収入を物件価格で割った最もシンプルな利回り指標です。経費や空室損を考慮しないため、物件のスクリーニングに使いますが投資判断の最終指標にはなりません。

表面利回り = 年間家賃収入(満室想定) ÷ 物件価格 × 100

表面利回りとは何か

表面利回り(グロス利回り)は、年間家賃収入を物件価格で割った最もシンプルな利回り指標です。 経費や空室損を一切考慮しないため、物件の「第一印象」として大量の物件をスクリーニングする際に便利ですが、 投資判断の最終指標としては不十分です。

計算例

条件:物件価格5,000万円、月額家賃35万円(満室想定)

年間家賃収入 = 35万円 × 12 = 420万円

表面利回り = 420万円 ÷ 5,000万円 × 100 = 8.4%

表面利回りの目安(2026年時点)

エリアRC一棟木造アパート
東京23区4〜6%5〜7%
大阪・名古屋・福岡5〜8%7〜10%
地方主要都市7〜12%9〜15%

表面利回りと実質利回りの違い

表面利回りは経費を無視しているため、実際の収益力を過大評価します。実質利回りは NOIベースで計算するため2〜4%低くなるのが一般的です。表面利回り10%の物件でも実質6〜7%ということは珍しくありません。

注意点

  • 表面利回りが高い物件は、空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い可能性があります。利回りだけで飛びつかず、必ず実質利回りDSCRも確認しましょう。
  • 購入諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税等、物件価格の7〜10%)を含めていないため、初期投資額は表面利回りの分母より大きくなります。

実質利回り(ネット利回り)とは?経費込みの真の収益率

最終更新日: 2026年4月3日

実質利回りはNOIを物件取得総額で割った指標で、運営経費と購入諸費用を反映します。表面利回りより2〜4%低くなるのが一般的で、投資判断ではこちらを重視します。

実質利回り = NOI ÷(物件価格 + 購入諸費用) × 100

実質利回りとは何か

実質利回り(ネット利回り)は、NOIを物件取得総額(物件価格+購入諸費用)で割った指標です。 運営経費・空室損・購入諸費用をすべて反映するため、表面利回りより正確に物件の収益力を評価できます。

計算例

条件:物件価格5,000万円、購入諸費用400万円、NOI 350万円

物件取得総額 = 5,000万円 + 400万円 = 5,400万円

実質利回り = 350万円 ÷ 5,400万円 × 100 = 6.48%

(参考:表面利回り = 420万円 ÷ 5,000万円 = 8.4%)

この例では表面利回り8.4%に対し実質利回りは6.48%と、約2%の差があります。 経費率が高い物件や築古物件ほどこの差は広がります。

実質利回りの判定目安

実質利回り評価
3%未満借入金利を考慮するとCFが残りにくい
3〜5%都心好立地なら許容範囲だが低水準
5%以上投資として成立しやすい水準

注意点

  • キャップレートとの違いは分母です。キャップレートは物件価格のみ、実質利回りは購入諸費用を含む取得総額を分母にします。
  • 借入返済は含まれていないため、レバレッジの効果はCCRで別途確認してください。

キャップレートとは?不動産の収益還元利回り

最終更新日: 2026年4月3日

キャップレート(還元利回り)はNOIを物件価格で割った指標で、借入条件を排除した純粋な物件収益力を示します。エリアや築年数による相場があり、売買価格の妥当性判断に使います。

キャップレート = NOI ÷ 物件価格 × 100

キャップレートとは何か

キャップレート(Capitalization Rate:還元利回り)は、NOIを物件価格で割った値です。 借入条件を排除した物件そのものの収益力を示し、売買価格の妥当性やエリア間比較に使われます。

計算例

条件:物件価格8,000万円、NOI 480万円

キャップレート = 480万円 ÷ 8,000万円 × 100 = 6.0%

逆に、想定NOIとエリアのキャップレートから適正価格を逆算することもできます。 NOI 480万円 ÷ 6.0% = 8,000万円が適正価格の目安です。

エリア別キャップレートの傾向

エリアキャップレート目安特徴
東京都心3.5〜5%低リスク・低利回り、資産価値重視
地方政令市5〜8%利回りとリスクのバランス
地方郊外8〜12%高利回りだが空室・人口減リスク

K%との関係:レバレッジ判定

キャップレートとK%(ローン定数)を比較することで、借入のレバレッジが正に効いているかを判断できます。 キャップレート > K% であれば「正のレバレッジ」、逆であれば「逆レバレッジ」で借入が収益を圧迫している状態です。

注意点

  • キャップレートはあくまで単年度の指標です。将来の家賃変動や大規模修繕は反映されません。長期的な評価にはIRRを併用してください。
  • 実質利回りとの違いは分母の購入諸費用の有無です。

GRM(総収益倍率)とは?物件価格の割安度を測る

最終更新日: 2026年4月3日

GRM(総収益倍率)は物件価格を年間家賃収入で割った値で、投資回収に何年かかるかの目安になります。数値が低いほど割安とされ、表面利回りの逆数に相当します。

GRM = 物件価格 ÷ 年間家賃収入(満室想定)

GRMとは何か

GRM(Gross Rent Multiplier:総収益倍率)は、物件価格を年間家賃収入で割った値で、投資額の回収に何年かかるかの簡易的な目安です。表面利回りの逆数に相当し、 数値が低いほど割安とされます。

計算例

条件:物件価格3,000万円、年間家賃収入300万円

GRM = 3,000万円 ÷ 300万円 = 10.0倍(=回収に10年)

表面利回り = 1 ÷ 10 × 100 = 10.0%

GRMの目安

GRM表面利回り換算評価
8倍以下12.5%以上高利回り(リスクも確認が必要)
8〜15倍6.7〜12.5%一般的な投資物件の範囲
15倍以上6.7%未満低利回り(都心物件では一般的)

GRMの限界

  • GRMは経費・空室損を一切考慮しません。経費率が大きく異なる物件同士の比較にはキャップレートを使いましょう。
  • 同一エリア・同一物件タイプの簡易比較に適しています。「同じ条件で割安な物件はどれか」を素早く判断するためのフィルター指標と位置付けてください。
  • 実際の投資回収期間は投資回収期間でより正確に計算できます。